vol.1 映画「孤狼の血」監督:白石和彌&原作者:柚月裕子インタビュー

映画が好きなアナタへ。

これは、映画を作る者同士、映画に関わる者同士、「過去」、「現在」と「未来」、映画とどう向き合っていくか語らう対談コラムであります。好きな映画の仕事をさせてもらい、20年以上経った私が、第一線で活躍する交流のあるゲストの方々と、「今、生み出した映画」や、「これからどう映画を生み出していくか?」など“映画向上計画”を皆で生み出していけたら、と。

“映画を好きな人”“映画の仕事をしたい人”に是非読んで欲しいと勝手に思って連載をスタートさせました。多くの人に、映画作りの魅力を知ってもらい、映画をもっと楽しんで欲しい、という思いを込めて。伊藤さとり(映画パーソナリティ)より

 

映画「孤狼の血」監督:白石和彌&原作者:柚月裕子

映画「孤狼の血」監督:白石和彌&原作者:柚月裕子インタビュー

インタビュー:伊藤さとり

 

ーー映画を先に見てから原作を読ませて頂いたのですが、映画のこだわりが見えてきてどちらも楽しみました!

柚月:原作が映画になるとか、漫画がアニメになる場合、摩擦が起きるっていうか、観客の方が色々な感想を抱くと思うんです。これまで、私が見て来た原作のある作品でここまで小説と映画、それぞれが面白く思えた作品は出会った事がなかったです。小説は原作者なので客観的に見えない部分もありますが、映画本当に面白かったです。

 

ーー白石監督は、若松孝二監督を師事してきた監督なので匂いがプンプンしているので「得意だろうな」って思いながら映画を見ていて、原作者が女性っていう事に本当にビックリして、このコラボレーションだからこそ凄く面白い化学反応が出来たんではないかと。

白石:そう言ってもらえるのは、すごくうれしいですね。

柚月:確かに。真珠のシーン、冒頭の養豚場のシーンは、私には浮かばなかったです。「悔しい」って思いましたもの(笑)あの凄み、えげつなさは、男性監督ならではと思いましたね。

白石:柚月先生が真珠のシーンを書いていたら、僕は性別を疑いますよ(笑)

柚月:一応、自分なりに主人公、大上(役所広司)のキャラクターを作る時に、マグナムとかエロスとか色々と頑張ったんですけどね(笑)

白石:あれは、小説では成立しないですからね。色々と(笑)

 

ーーだから、読むのと映像にするのとの違いの面白さと発見がありました。

柚月:言い換えれば映像をそのままノベライズにするのは、意味のあることなのか?活字をまんま映像にすることで何が生まれるのか?という疑問が生まれますよね。映像と小説は、似て非なるもの。面白さのジャンルが違うので。ただ「孤狼の血」に関しては、私が書きたいと思う幹の部分は監督と同じだと。絶対にお任せ出来ると思ったんです。試写を見たら全くその通りで(笑)しっかり、幹の部分は変わらないんです。大上と日岡(松坂桃李)の関係とか、でも枝葉がすごくボリュームアップしてて、本当に面白かった!小説は、一視点。基本、日岡の視点ですから。

孤狼の血

ーー柚月さんは前から映画が好きだったのですか?

柚月:好きですね。ただ、自分の原作が映画になるという事が、初めてだったので、凄く勉強になりました。自分が書いた場面を映像では「こう表現するのか」って(笑)比較っていうか?勉強になりました。それは、先日出版されました続編にあたる「凶犬の眼」に活かされています。映画を見ていなかったら生まれなかったシーンもあります。

白石:嬉しいですね。

柚月:担当さんも「凄くいいシーンだね」って褒めてくれました。

 

ーー白石監督に影響されたという事ですね。

柚月:おっしゃる通りです、悔しいけど(笑)「孤狼の血」が赤い炎だったら「凶犬の眼」は青い炎って捉えていて。実際、温度って青火の方が高いんですよね。日岡の鬱屈した思い、抱えているものを表現する時に映画を見たからこそ、台詞ではなく、その行動とか仕草、表情で表現することが出来るんじゃないか?監督ならこう表現するんじゃないか?と思いながら頭をひねって書き上げたんです。

 

ーー監督自身が脚本もお書きになる方ですから、この本を映画化するにあたって「これは、こう見せよう!」って映画化の時点で、最初から考えていたんですか?

白石:柚月さんがおっしゃるように骨はしっかりしていて、どうゆう世界観をやりたいのかが1ページ、2ページ目から伝わってくる強さがある本ですよね。映画化するにあたり、小説ならではのミステリー、トリックがあって、そうゆうところの落としどころ、そして登場人物の群像劇をどう見せていくのかを悩み、そして考えましたね。登場人物が多いんで、広島仁正会(五十子会、加古村組、全日本祖国救済同盟)、尾谷組とか1度で関係性を理解してもらわないといけないので(笑)

 

ーー確かに映画『仁義なき戦い』を見ていると、相関図とか欲しくなっちゃいます。

白石:『仁義なき戦い』は初見でも、争っているのはわかるし「何となくこうゆう事なんだろうな?」ってわかるんですけど。誰がどこの組って結局わかんないですよね。

柚月:わからないながらも魅せるって凄いですよね。

白石:そうですね。でも、今の方々が見るには、もう少しわかりやすくした方がいいかなって。なのでビジュアルで見せることにしました。

柚月:映像ってそこが必要ですよね。

 

ーー答えはそれぞれあるんですが、映画と原作との関係性って素敵ですよね。

柚月:相思相愛ですよね(笑)

白石:やっぱり、柚月先生が『仁義なき戦い』とか『県警対組織暴力』という映画作品にリスペクトを持って書いて下さったので。それがないと僕達は、スタート出来なかったし、あの高みにいきなり挑もうとは思わなかったと思います。原作を読んで本当に面白かったし、そのリスペクトがあったからこそ出来た映画だと思います。

柚月:監督は、同じジャンルの映画作品を撮られるので。確かに小説でいうならば『仁義なき戦い』は、松本清張作品。ああゆう名作があるのに、果たして自分が書けるのか?ハードルって同じジャンルだと高くなりますよね。かりに私が同じジャンルの映像に関わっていたら、同じジャンルは撮れないと思います。

 

ーー白石監督が撮るべき作品だと感じました。他の監督さんの想像がつかない。

白石:最初お話を頂いた時は、目指すところが高すぎて「どうかな?」って思いましたよ(笑)

『仁義なき戦い』みたいなものを作りたいって言われて「東映さんの看板作品を背負えって言われてもな」みたいな。「橋本一監督とかどうですか?」って言いましたもん(笑)プロデューサーの皆さんが言って下さったのは「『日本で一番悪い奴ら』を見てギリギリのタブーを攻めようとしているのが良かった」って(笑)このお話を頂いたときに言われたのは「とにかく振り切ってくれ」と「どんなに残酷なものになってもいい」と「やれるだけやってくれ」というオーダーでした(笑)

映画「孤狼の血」監督:白石和彌&原作者:柚月裕子インタビュー

白石:東映さんも懐が深いですよね。やる以上は、中途半端なものはいらないからって。

思い切ったものをやって欲しいって(笑)

 

ーーそれを聞いて、プレッシャーは強まったんですか?

白石:それで、反対に振り切れた感じですね。

柚月:その潔さ、覚悟を映画から感じます。

 

ーー私の小さい頃は、そうゆう世界の映画が当たり前のように存在していて、昔の映画には沢山あったじゃないですか。男の人は、こんなにギラギラしていて、緒形拳さんの顔を見るだけで、怖くって(笑)それが、最近は優しい映画(恋愛映画)が増えてきて、あの当時の荒々しいヤクザ映画のようなものが無くなって来ているのを感じていて、今作を観て懐かしさと同時に新鮮さを感じました。

白石:昔の映画をリバイバルしてもしょうがないとは思っていて。あの当時には無くって、技術的にも現代の何に置き換えていくのかって事を考えましたよね。日本ではノワールが作られなくなって、一方で韓国では韓国ノワールが全盛期を迎え、この落差って何だろうって『凶悪』を作っている時から感じていました。本当にやりたい世界がこうゆう所にあるわけですから、今回、この作品の世界観の中にポイントポイントでその世界を入れていきたいと思いましたね。

 

ーー柚月さんが、このゆう題材を選んで作品を書き上げた理由は、何ですか?

柚月:右を書こうと思ったら、左を知らないと書けない。映画であれ小説であれ、美しいものの存在が、際立つのは反対が存在するからだと思うんです。正直、生きるって大変じゃないですか、きつい事も多いし。まさに『仁義なき戦い』ってやってる事はスクリーンの中でみっともないんですよね。でも、生き残ろうと自分の信念を持って行動する、その姿がカッコいいんですよね。それがまさに『孤狼の血』でみっともない姿を役者の方が演じているのですが、カッコいいんですよ。今の女性にもカッコいいって感じるはずです。

 

ーーカッコ悪くてカッコいい。泥臭いのが最高って感じですよね(笑)それが、人間なんですよね。

柚月:色気があるんですよ。色香って出そうと思って出せるものではなく、自然に感じるものが本当の意味での魅力だと思うんです。今回、出演されている役者さん達は、皆さん自分をカッコよく見せようと思われている方は、いないと思うんです。

白石:いないと思います。

柚月:カッコよく見せようと思っていない姿が、カッコいいんです。今回、可愛らしく感じたのは、役所広司さんですね。怖いんだけど、可愛い(笑)

 

ーー原作を読んでいて大上役は、役所広司さんしか思い浮かばなかったです。

白石:あの大上は、役所さんにしか出来なかったと思います。

柚月:基本私は、誰かをモデルにして書いたりはしないのですが、嬉しいですね。お話を聞いた時、「大上が役所さんなんだ」ではなく「役所さんが大上なんだ」っていう受け止め方でした。そして、日岡役の松坂桃李さんが良かったですね。

白石:桃李君って役者としては、すでにブレイクしていて、全国津々浦々の人が知っている俳優さんになっているんですが、こんなに底がまだあったんだって(笑)人としてまだまだ底がみえないって凄い武器になる。今回、それをまざまざと見せられました。

 

ーー監督が松坂桃李さんの力量にいつ頃、気付いたのですか?

白石:僕は、舞台「娼年」を見た時ですね。観劇後、バックヤードに行った時、初めてお会いして、その時の第一印象がなんていうか、舞台で見せられていたものとのギャップが凄くて、やられた感があったんです。この子、ちょっと違うなって(笑)

 

ーー松坂桃李さん、その言葉を聞いたら嬉しいでしょうね。白石監督と一緒に仕事をしたいと思っている俳優さんやプロデューサーは沢山いますから。お二人が、作品を作る上で絶対にブレない、ブレたくない思いを教えて下さい。

白石:僕は、やっぱり師匠(若松孝二監督)が師匠なので、そこに共鳴出来ていたから10何年一緒にいる事が出来たので「反権力」っていうか、「弱い者の味方」でありたいていうのが常にあります。『孤狼の血』の大上さんも一番大事なところは、そこなので共感出来たし、共鳴できました。つまり、それは柚月先生の思っている事で、物語の奥底に流れているものだと思います。

柚月:成功談と失敗談、どちらを書きたいか?というと失敗談になるわけで。成功者よりも失敗者に関心が行くんです。社会と個人だったり、組織と自分だったり、そこをどう渡りをつけながら自分で落とし込んで生き残るか?大きなものに立ち向かうのは、凄く勇気がいる事で、ましてや誰も味方がいない、一人の状況の中で極限の状況でも自分の意思を曲げない熱さって誰もが「そうしたい」っていう思いを秘めていると思うんです。でも、現実はそうする事が出来るところと出来ないところがある。なので、何かに立ち向かいながら、必死に生きる姿を描き続けていきたいと思っています。

白石:それはたぶん、柚月先生は、生きる指針を示してくださっているんだと思います。

柚月:正解なんてなくって、人それぞれの生き方がある事を知って欲しい。

 

ーー本を書くにしろ、映画を作るにしろ、今の流行りってあるじゃないですか。今は、流行らないからとか言われる事もあるんじゃないんですか?

白石:そういう事は、飲み込まなきゃいけない事もありますけどね。そういう事は、腹に中に溜めとくからねって(笑)

柚月:そこが潔さ、カッコよさだと思います。実は『孤狼の血』のプロットを出した時、編集さんから、あまり「いいですね」って言葉をもらえなかったんです。代わりに、ある先輩作家の極道物の名作小説が送られてきて、読むように言われたんです。読めば、きっと敵わないって思って、私が諦めると思ったようで(笑)あんに別の物にしましょうってメッセージだったようです。未読だったので、ちょっと読んで、でもすぐに閉じたんです。読んだら、圧倒されて怯んで書けなくなるって思ったんです。なので、あえて読まないで、編集さんに電話して、「読みました!凄く面白かったです」って嘘をついて(笑)「でも、書きたいから相談にのって下さい」って言ったんです。後になって、編集さんには嘘をつきましたって言いましたけどね。編集さんが考え直しませんか?って言った気持ちは理解出来るんです。でも、どうしても、書きたかったんです。売れる、売れないよりもまず書きたかったんです。

白石:その衝動は、止めちゃだめですよ。

 

ーー「自分を信じる、自分に素直であれ」って事ですよね。

柚月:求められるものと自分の書きたいものをいかに融合させて世に送り出すのかがプロ。独りよがりのものを出すのは違うし。出版社からの要望、つまり求められるものは、全部受け止めた上で、自分のやりたいものを書いていくのが必要な事ではないかと。

 

ーーまさに“評価を恐れずに”って事ですよね。

柚月:嘘をついて書かせて頂きましたが、評価も頂いているので、今は、編集者の前でも胸を張ることが出来ます(笑)責任がありますからね。

白石:責任って、面白いものを作る、書く事でしか返せないものですから。

ーーこれからもずっと挑戦していくお2人の作品、追い続けます。

映画「孤狼の血」監督:白石和彌&原作者:柚月裕子インタビュー

インタビュー日:2018年4月25日(水)

 

 

『孤狼の血』
公開日:2018年5月12日(土)
劇場:全国にて
配給:東映
公式HP:http://www.korou.jp/
(C) 2018「孤狼の血」製作委員会

▼作品ページ
https://cinema.co.jp/title/detail?id=80329

孤狼の血

伊藤さとり(いとう さとり)

映画パーソナリティ。邦画&洋画の記者会見や舞台挨拶を週5回は担当する映画MCであり、年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。
TSUTAYA店内放送「WAVE-C3」で新作DVD紹介のDJ、ケーブルテレビ無料放送チャンネル×ぴあ映画生活×Youtube:動画番組(俳優と対談)「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、雑誌「シネマスクエア」コラム、スターチャンネルで映画紹介他、TV、ラジオ、雑誌、WEBなどで映画紹介のレギュラーを持つ。心理カウンセリングも学んだことから映画で恋愛心理分析や恋愛心理テストも作成。

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