vol.28 映画『影に抱かれて眠れ』加藤雅也さん×松本利夫さんインタビュー

映画『影に抱かれて眠れ』加藤雅也さん&松本利夫さんインタビュー

ーーお二人は初めての共演とお聞きしました。お互いの印象を教えてください。

松本:正直、雅也さんの第一印象は寡黙でダンディー。暗いバーとかでバーボンとか飲んで葉巻を吸ってそうだなって(笑)どうやってコミュニケーションをとろうか考えていました。でも、真逆だったんです。凄く気さくに話しかけてくれて、コミュニケーションもとって下さって、今回の現場では一番盛り上げて下さいました。コミュニケーションの入り口は、僕が所属しているLDHのメンバーと雅也さんが結構共演していて、それがきっかけでした。

加藤:今回の役・辻村のイメージにピッタリだと思いました。とにかく台詞のテンポが凄くいい人で、聞いたら元々ラッパーだったって。

松本:ラッパーじゃないです、ダンサーです(笑)

加藤:とにかく、台詞をパパパパって喋る人って印象が強いです。

 

ーーキャストの方々にアーティストの方が多いですね。

加藤:そうなんです。面白いですよ。

 

ーーAK-69さん、湘南の風の若旦那さんが入っていて、しかも主題歌を担当されたのがクレイジーケンバンドさん。

加藤:幻の曲ですよ。書いていたけど、リリースしていなかった曲を今回この映画の為に出したら、監督が気に入ったんです。

映画『影に抱かれて眠れ』加藤雅也さん&松本利夫さんインタビュー

ーー原作は北方謙三さん、そして監督は『相棒』シリーズの和泉聖治監督。さらにプロデューサーが俳優の中野英雄さん、脚本を手掛けたのが俳優の小澤和義さん。こんな座組はなかなか無かったので、とても驚きました。皆さんはこの座組に参加して、どんな感想を持たれましたか?

加藤:中野プロデューサーの独特なキャスティングですよ。AK-69さんを連れて来たり、その感性が“あり”なんだなって。既成じゃないんですよ、彼独特なんです。僕は今回それが凄く合っていると思いました。カズ(小澤和義)はアート性が高い人間なんで、彼が書いている本はそれが反映されていて、新しい風が吹いているハードボイルドの世界を感じました。カズ(小澤和義)やヒデ(中野英雄)がプロデュースすることが出来たからこそ作れた作品だと思います。普通の人だったら今の時代、手をつけなかったんじゃないかな(笑)

松本:北方謙三さんの原作「抱影」を読ませて頂いて、正直最初はよくわからなくて(笑)それから台本を頂いて、あれは第8稿ぐらいですかね。台本が何度も何度も書き直されたので、印象がちょっとずつ変わっていったんです。ある意味、最初の初稿は説明がなさ過ぎる。それが第8稿では観る人にとって分かりやすく説明が入っている。

元々の邦題(仮)『抱影』だったのが『影に抱かれて眠れ』に変わったように分かりやすくなっている。イメージしやすくなった印象です。

映画『影に抱かれて眠れ』加藤雅也さん&松本利夫さんインタビュー

ーーこの映画はノワールの香が漂っています。オープニングの冒頭からクレイジーケンバンドさんの曲とお三方揃ってキャッチボールするシーンがあり、そのシーンから関係性が感じられます。

加藤:そうですね、何も語っていません。

映画『影に抱かれて眠れ』

ーー北方謙三さんと加藤雅也さんは、共演シーンがありますね。

加藤:共演って(笑)先生と一緒に映像に映っただけでしょ。お店の奥の方に先生が居ただけだから(笑)

松本:あのシーン、僕好きなんです。

加藤:僕の方からは先生が映っているけど、先生の方からの返しの時には僕はいなくなっているんだよね、グラスだけ残して。

 

ーー北方先生とはお話をされたのですか?

加藤:もちろん。“俺、どうすればいいんだ。普通に飲み屋に来た感じでいいのか”って聞かれたので“先生、普通に飲み屋に来た感じでいいと思います”って(笑)

松本:そういう感じなんですね。

加藤:以前一言台詞があるシーンに出演した時、カチンコを鳴らされた瞬間、台詞を言えると思っていたのに、言えなかった事があったらしいんです。今回のようなシーンは“楽だ”って言っていました。

 

ーー登場されているだけで、インパクトがありました。

加藤:存在自体がハードボイルド!

 

ーー火野正平さんとのシーンもパンチがあって、好きなシーンの一つです。

加藤:正平さんは、パンチあり過ぎですよ。

松本:あのシーンで正平さんに挨拶するじゃないですか。僕、あの時の雅也さんの表情が大好きです。

加藤:どんな表情してるの?

松本:緊張も含めた…表情に出ているんですよ。雰囲気出てるんです。

加藤:もう一回見直さないと(笑)正平さんとは、撮影が一緒だったか?撮影現場が一緒だったか?何回か会っているんです。渋いですよね。存在自体、生き様みたいなのがボンってしているから。自分も正平さんのような役者になっていきたい。あの人がそこに居るだけで彫り師を何年もやっているっていう説得力がある、凄いですよ。間とかも計算されているものではない凄さ。ヒデ(中野英雄)が凄く敬愛している俳優さんです。

 

ーー中野プロデューサーは、現場によく来られていたのですか。

加藤:毎日来ていました(笑)

 

ーー松本さんは、中野プロデューサーにどんな印象をお持ちになりましたか。

松本:プライベートでご飯に連れて行ってもらった事もあります。最初は、雅也さんの時と同じで怖いイメージがあったんですけど、これまた中野さんも気さくで、正直者という印象です。

加藤:ヒデ(中野英雄)は、最初「愛という名のもとに」(フジテレビ:1992年)の「チョロ(倉田篤)」という役でどちらかと言うと柔らかい印象があると思うけど。

松本:結構、Vシネ系の映画にも出演されていたので、ちょっと怖いイメージだったんです。滅茶苦茶いい人で驚きました。

 

ーー松本さんは、今回の役について和泉監督や中野プロデューサーに何か言われましたか?

松本:特にないですね。中野プロデューサーからは“演じたいように演じればいい”って言われました。和泉監督にも言われた印象がないです。

 

ーー今まで体験してきた現場とは違う部分とかありましたか?

松本:やっぱりプロデューサーが役者さんっていうのが、大きな違いですね。表をやりながら裏もやる人、つまり両方の気持ちが分かる。中野さんは、今回が初めてのプロデュース作品で大変なこともあったと思うんです。でも両面を見て下さる方だったので、自分的には凄く演じやすかったです。楽しい現場でした。

加藤:特別な感じはなかったです。あえて言えばキャスティング!ヒデ(中野英雄)自身が俳優ですからキャスティングがどれだけ大事かってことを充分わかっているので、脚本に合っている人物を選んでいる。名前が有名だからとか、話題だからとかで選んでいない。そういう意味では全体的に色んな人に声を掛けて、役にあったキャスティングがされていると感じています。プロデューサーってお金を回収しないといけないから、収益などお金の算段の方が強くなっちゃうと思うんです。でも、ヒデ(中野英雄)の場合は、役者的な本能で“この人とこの人を組み合わせたシーンが見たい”っていう感覚で選んでいるような印象を受けました。

 

ーー役者として立つ上で大切にしていることを教えて下さい。

加藤:どんな役でも手を抜かない。時間があってもなくても、与えられた時間の中で考えられるだけ考える。現場に入ってから考えればいいってことはしない、それだけは大事にしています。映画ってヒットしなかったら何もなかった事のように思われて、ヒットしたらそこに出演している人達は当然クローズアップされていく。でも、長く時間が経っていくとちゃんとやっていたものに対しては、演技が例え下手であれ、一生懸命にやっていたものは映っているし、それが皆に印象を与えていく。昔は公開時にしか観られなかったものが今は、色々な形で観ることが出来るようになっていますからね。それだけに怖いなとも思います。

松本:僕も一緒です。そもそも、ダンスもそうなんですが好きでやって来たもので、自分の中で努力ってものを感じていなかったんです。気が付いたらグループでやっていて、そのグループが日本のポップスシーンの中に居て、気付いたらってここに居るってところがあったんです。その中で僕はお芝居が一番苦手で一番嫌いなものだったんです。最初に舞台をやらせて頂いた時は本当に辛かった。今までに感じた事がない辛さで努力しかない“もう二度とやるか”って思って終えた時、その達成感、満足感、気持ち良さで興奮してしまって(笑)それでもう一度お話を頂いた時に“もう一回、あの辛さ、努力、大変さを味わってみたい”って思って再度やらせて頂いて、また達成感と満足感、気持ち良さを味わって、僕はその繰り返しです。元々は好きではなかったお芝居にのめり込んでいる自分が居る。そして終えた時の達成感に気持ち良くなっちゃうんですよね、M心ですかね(笑)

映画『影に抱かれて眠れ』加藤雅也さん&松本利夫さんインタビュー

ーー苦手と思った理由は何ですか?

松本:死ぬほど照れ臭かった。ダンスは自分が踊りたいように踊れる、でもお芝居は決められたルールの中で言葉を発する。やっぱりダンサーなんで、言葉を発すること自体にちょっと抵抗があったのかもしれないです。

映画『影に抱かれて眠れ』加藤雅也さん&松本利夫さんインタビュー

ーー加藤さんは、演技をしていて照れ臭いと感じたことはありますか?

加藤:テレっていうか、演技の怖さって初めは、わからないんです。何もわかってないから生意気なんですよ。でも、だんだんと本当の怖さを知った時に、出来ない自分が居ることがわかって、それからが大変。“俺、路上で赤ちゃんになれるよ”って言っていても実際にやろうとすると出来ない人が多い、そこまで自分を捨てきれない、当たり前ですよね、羞恥心があるから。僕にとっては、それをどう克服していくかを悩んできた世界です。多分、彼(松本利夫)は自分がその世界にのめり込むことが本能的にわかっていたから、入ることに距離をおいていたのかもしれないですね。だからこそ、彼(松本利夫)にとって俳優は天職だと思います。僕は、ダンサーよりも俳優の印象の方が強いから、のめり込んだら凄いと思うよ、減量とかやりそうなタイプだもん(笑)

松本:滅茶苦茶、嬉しいです。

 

ーー最後に映画を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。

松本:いい意味で昭和の匂いを感じる映画になっています。その中で現代版にアップデートされたようなスタイリッシュな作品です。何よりも加藤雅也さん演じる硲(はざま)さんが男の生き様を魅せてくれるので、是非劇場に観に来て下さい。よろしくお願いします。

加藤:昨今、なかなかハードボイルドの映画を作れなくなっていますが、やはり男のハードボイルドの世界を描いたこの映画がヒットして、また違う作品に出演出来たらいいなと思っています(笑)男が観に来る「男の映画」にしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

作品情報

影に抱かれて眠れ

影に抱かれて眠れ PG-12

  • 公開日
  • 2019年9月6日より
  • 劇場
  • 全国にて
  • 配給
  • BS-TBS
  • 公式HP
  • http://kagedaka.jp/
(C) BUGSY

新着コラム

vol.114 『アイネクライネナハトムジーク』 今泉力哉監督インタビュー

半年経ってません 今泉力哉監督の最新作が今月20日に公開になる。 4月に『愛がなんだ』が公開されて、まだ半年も経っていない。 さらには来年早々に『his』の公開…

vol.113 『台風家族』 草彅剛さん、市井昌秀監督インタビュー

公開への思い 公開が延期になっていた『台風家族』。いよいよ9月6日(金)に公開になる。 主演の草彅剛さんはその思いを「去年の夏、皆で頑張って作品をつくったので、…

vol.112 『駅までの道をおしえて』 新津ちせさん、滝藤賢一さんインタビュー

話題の子役・新津ちせさん 少女と愛犬。 深い絆で結ばれたひとりの少女と一匹の物語ではあるが、それだけでなく、切なさの奥にあるたくさんの愛情を感じられる物語。 伊…

vol.29 映画『葬式の名人』前田敦子さん×樋口尚文監督インタビュー

ーーずっと前田敦子さんを応援していらっしゃった樋口尚文監督からの主演オファーを知った時はいかがでしたか? 前田:尊敬するオタク中のオタクの監督ですからね(笑)色…

vol.111 『カツベン!』 周防正行監督インタビュー

カツベン=活動弁士 周防正行監督、約5年ぶりの新作『カツベン!』。 周防監督にインタビューをするのは『終の信託』(2012)以来で、その時は奥様の草刈民代さんと…

伊藤さとり(いとう さとり)

映画パーソナリティ。邦画&洋画の記者会見や舞台挨拶を週5回は担当する映画MCであり、年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。
TSUTAYA店内放送「WAVE-C3」で新作DVD紹介のDJ、ケーブルテレビ無料放送チャンネル×ぴあ映画生活×Youtube:動画番組(俳優と対談)「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、雑誌「シネマスクエア」コラム、スターチャンネルで映画紹介他、TV、ラジオ、雑誌、WEBなどで映画紹介のレギュラーを持つ。心理カウンセリングも学んだことから映画で恋愛心理分析や恋愛心理テストも作成。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
TOP