vol.109『イソップの思うツボ』浅沼直也監督、上田慎一郎監督、中泉裕矢監督インタビュー

映画『イソップの思うツボ』浅沼直也監督、上田慎一郎監督、中泉裕矢監督インタビュー

左から、浅沼直也監督、上田慎一郎監督、中泉裕矢監督

今度は監督が3人!

『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が、その『カメ止め』が大ブレイクしている最中に脚本を書いていた作品、『イソップの思うツボ』。

この作品の面白いところは何と言っても、上田監督、浅沼直也監督、中泉裕矢監督の3人が共同監督として演出をしているということ。

『イソップの思うツボ』のキャッチコピーは“『カメラを止めるな!』のクリエイター再集結!”と書かれている。

『カメ止め』で浅沼監督はスチールを担当し、中泉監督は助監督を担当。

しかし、インタビューをしてみると「『カメ止め』が苦手な人も『イソップ』は好きになるかも」と監督たちは言っていた。

『イソップの思うツボ』と3人の監督の魅力をレポートします。

 

『カメ止め』は光、『イソップ』は影

――3人の監督の役割は?

上田監督「3つの家族を描いた話なんですけど、それぞれの監督が担当家族を決めて、その家族がメイン時は誰がメイン監督、という風に決めて、他の2人は助監督というスタイルでした。常に3人は現場にいて、メインの監督が決定権を持つ。後半は3つの家族が入り混じってくるので、場面によって誰が監督をするか話し合いをして決めました。」

中泉監督「一日の中で監督が入れ替わることもありました。」

上田監督「撮影には日々スケジュールというものがあるんですけど、そこに監督が誰かという欄があって、このシーンは誰、このシーンは誰と。」

 

――仲が良くないとできないスタイルですね?

浅沼監督「そうですね。マブダチですね。」

上田監督、中泉監督「マブダチではない。」

中泉監督「3人が絶妙な距離感だったからできたかもしれないですね。各々が信頼も信用もしているんですけど、飲みに行ったりする距離感ではないんです。距離が近すぎると言い合ってしまったりするんですけど、そこまで至らない距離感を保ち続けられたのが良かった。結果的に大げんかもせず、でも皆のことはすごくわかっている中で作品を作ることができた。ビジネスパートナーとして最高の関係かもしれないですね。」

 

――脚本については?

上田監督「プロットの原型は浅沼さんとアドバイザーの竹内(清人)さんに作ってもらいました。その後、それを受け取って、プロット改稿とメイン脚本は僕が書きました。ただ2人の意見を大幅に取り入れながら書いているので共同脚本という形になっています。」

 

――脚本づくりで苦労は?

上田監督「『カメ止め』の公開真っ最中だったんですよ。一番忙しい時だったので、苦しんでいる暇も立ち止まる暇もなかった。この短い期間で書き切らないといけない、という状況だったので、プレッシャーを感じている余裕もなかったですね。」

 

――『カメ止め』を意識した部分はあった?

上田監督「一時、そういう感じはあったよね?『カメ止め』に似てしまうのは避けようとしていたと思います。」

映画『イソップの思うツボ』浅沼直也監督、上田慎一郎監督、中泉裕矢監督インタビュー

中泉監督「僕らの方が意識していたかもしれないですね。この作品は『カメ止め』より前から動いていて、『カメ止め』のフィーバーでだいぶ撮影時期がずれてしまったんです。『カメ止め』には、色んな映画祭などに出品して、どんどん拡がってほしいとは思っていたんですけど、『イソップの思うツボ』が無くなってしまうんじゃないかという恐怖も感じていました。(『イソップ』が)『カメ止め』に似過ぎたら意味がないとすごく思っていたので、上田さんには“『カメ止め』っぽさは無くした方が3人がやっている意味が出てくると思う”と僕らから伝えていました。でもとにかく上田さんは脚本を書く時間がなくて“飛行機の移動時間があるからそこで書くわ”と言って、帰ってきても全く書いていないとか(笑)」

上田監督「その節は大変ご迷惑をおかけしました…。」

中泉監督「空いているスケジュールを見ても本当に移動しかないので、僕らもあまり強くは言えないというか。あれをやりたいこれをやりたいというアイデアは言いましたけど。」

上田監督「でもあまり(『カメ止め』から)離れようとしても逆におかしいので、通じる部分も残ってはいます。でも、テイストは全く違うので、そこは言っておかないと!と思うんですよ。“『カメ止め』クリエイター再集結!”というキャッチコピーなんですけど、『カメ止め』を観に行くテンションで行くと、え?!となる。テイストにしても鑑賞後感にしても。3人の監督で作っているので、全く別物だと思って観ていただけるといいかなと思いますね。」

浅沼監督「『カメ止め』が光だとすると、『イソップ』は影だと思うんですよね。『カメ止め』の家族・日暮家は温かくて優しい家族像でした。でも『イソップ』の家族は、お互い騙しあったり、出し抜いたりする。どちらかというと光が当たらない部分にカメラを向けて撮影をしているので、『カメ止め』のような爽やかなカタルシスとか鑑賞後感も残しつつ、しっかりと人物描写によるモヤモヤやズシンと心に残る重いものもありますがストーリーラインを楽しんで、エンターテインメントとして楽しんでもらうというのがいいかなと思います。」

上田監督「ポップに包んではいますけど、起こっていることは結構ヘビーですからね。『カメ止め』は俺には合わなかったな、という人も『イソップ』は合うってことがあるかもしれないですね。」

 

3監督の個性に迫る

――3人の監督でひとつの作品を作るというのは珍しいと思います。それぞれの良いなと思うところを教えてください。

中泉監督「上田さんは、映画が好きな無邪気な少年ですね。やりたいことをとにかくやりたい!という意思がものすごく強いし、熱量がすごいので、映画監督らしいです。浅沼さんは、人と一緒に作っていく人なのかなと感じますね。自分単独で作るというより、自分の周りの人たちにも責任を持って映画を作ってもらおうとするタイプの映画監督だと思います。」

 

――逆に、ここはちょっとな…というところは?

浅沼監督「仲違いさせようとしてます?(笑)」

中泉監督「上田さんに関しては、距離感の取り方がちょっと遠すぎるなと思いました。」

浅沼監督「遠いですよね(笑)」

中泉監督「もうちょっと距離感を詰めてくれないと深い話ができないんですよ。肩を組んでやっていこうというタイプではないので、一緒に作っているときに少し寂しさを感じました。」

上田監督「それは…ありますね~。」

中泉監督「浅沼さんはもうちょっと早く相談をしてほしい。その場の思い付きを一番優先するんですよ。僕は助監督のチーフもやっていたので、もっと早く言ってくれればもっといいものを揃えられるのに、とか。」

 

――上田監督は

映画『イソップの思うツボ』浅沼直也監督、上田慎一郎監督、中泉裕矢監督インタビュー

上田監督「中泉さんは、俳優出身の監督でもあるので、俳優の生理を考えた言葉を使うし、演出をするなというところがすごく勉強になりました。僕と浅沼さんは意見が食い違いやすいので、一歩引いて整理してまとめてくれましたね。浅沼さんは、先ほど中泉さんが“思い付き”と言っていましたけど、それは表裏一体だと思うんですよね。僕も結構思い付きで言っちゃうときがあるんですよ。思い付きを“今これを言うと空気悪くなるな”と思って引っ込める人が多いじゃないですか。それを気にせず思い付きを言えるというのは、僕は結構いいところだと思います。」

 

――ちょっとな、というところは?無かったらいいですよ。

上田監督「うーん。ちょっとガチなことを言うと(笑)。中泉さんはもっと気にせずやったらいいんじゃないかなと思う時はあります。現場の空気とか時間とかをもう少しわがまま言ってもいいんじゃないかな、自制しすぎじゃないかな、と思う時はありますね。いいとこでもあるんですけどね(笑)。浅沼さんは、その場の面白さをとってしまう時があるんですよ。取材しかりですけど(笑)。」

中泉監督「わかる、それ!(笑)」

上田監督「ここはまじめに言わなきゃいけないんじゃないのかなという時も、ちょっとふざけたりして、度が行き過ぎる時がある(笑)」

 

――浅沼監督はいかがですか?

映画『イソップの思うツボ』浅沼直也監督、上田慎一郎監督、中泉裕矢監督インタビュー

浅沼監督「中泉さんの良いところは、トリッキーな演出をするんですよね。(この後のお話はネタバレなので割愛)。ダメなところは、まじめなのでコメントがそこまで面白くない(笑)。上田さんの良いところは、上田さんの良いところは…。」

上田監督「あるやろ!」

浅沼監督「作家として脚本を書けるというところを尊敬しています。ダメなところは、中泉さんも言っていましたが、人との付き合い方が苦手なんじゃないかな、実は。」

中泉監督「一番うまそうじゃないですか?でも実は仲のいい人は少ないと思う。」

浅沼監督「『カメ止め』は、ポンコツを集めるというキャスティングだと上田さんも言っていましたが、上田さんの中で自分もポンコツだという自覚もあるので居心地が良かったのかなと思う。ポンコツっていうところにずっと居たがるんですよ。」

上田監督「『カメ止め』メンバーとも実はそんなに距離は近くないかもしれない。人とそんなに至近距離にはなれないのかな・・・。」

 

――それは監督としてですか?

上田監督「たぶんゼロ距離の人は2、3人しか居ないと思います。役者さんにも踏み込み過ぎると役者と監督の距離じゃなくなるというか。自然と自分にとって必要な距離感をとっているのかも。プライベートで食事に行くこととかもあんまりないですね。」

 

――これまで無いんですか?

上田監督「リハーサル終わりで食事に行くことはありますけど、わざわざプライベートでは無いですね…。」

スタッフさん「上田さん、これ以上言うと闇がバレる(笑)。そろそろお時間です。」

上田監督「闇ではないです!(笑)」

 

『カメ止め』同様、ネタバレ厳禁なストーリーのため、映画の中身についは詳しく書けませんでしたが、3人の個性の違う監督が一本の作品を紡いだという面白さを改めて感じたインタビューでした!

 

作品情報

イソップの思うツボ

イソップの思うツボ

(C) 埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

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神取恭子(かんどり きょうこ)

フリーアナウンサー、椙山女学園大学非常勤講師。愛知県西尾市出身、1977年生まれ。
現在は名古屋テレビ放送の情報番組「デルサタ」、音楽番組「BOMBER-E」にレギュラー出演。
2002年から名古屋テレビ放送(メ〜テレ)の局アナウンサーを勤め、番組「ドデスカ!」や「昼まで待てない!」などで映画監督、俳優、ハリウッドスター500人以上にインタビューを行い、舞台挨拶の経験も豊富。
他にも、報道現場でのリポートやスポーツ番組のリポーターを勤めた。
ANNアナウンサー賞 ナレーション部門受賞。
趣味は映画鑑賞(年間200本以上)、お肉を食べること(お肉検定1級)、プロレス観戦。

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